光を掴んだその先に。





この車、音楽とか流さないの?
静かすぎるよ。

せめてラジオとか聴こうよ…。



「なにか聴いていい…?」


「駄目だ」


「なんで」


「万が一のときに雑音になる」



会話はここで終了。

こういうときにクールな人っていうのは嫌だ。
静かな空気に水を差すことしかしないもん。



「学校で何かあったんだろ」


「…私たちのことを聞かれただけだよ」



でも思ったより早く納得してもらえる説明ができたから、そこは一安心だった。

施設育ちだから、みんなそこまで土足では踏み込まない。



「あいつと何かあったんだろ」


「…あいつ…?」


「佳祐、だったか」


「っ…!!」



ビクゥッと、肩が跳ねた。
別に肯定したわけではない。

ただその名前に身体が過剰反応してしまうシステムが追加されちゃったくらいで。


あのまま顔も合わさず会話も交えず、今日を終えたばかり。

明日からのことなんかこれっぽっちも考えてない。



「…あの…ね?」



恐る恐る口を開くが返事はない。
続けろ、の意味だ。

毎日関わるようになって1ヶ月経てば分かるようになる。



「か、家族じゃなくなったら……こう、…口と口を……くっつける…?」


「………は?」


「な、なんでもないっ!忘れてっ!!」



それから車内での会話はなかった。