光を掴んだその先に。





「ふざけんな、いらないんだよ…こんな名前…」



ぐっと固く握りしめられた拳は、今にも爪が食い込みそうなほどに震えている。


言えなかった、もう今の私には。

彼を抱きしめて「生まれてきてくれてありがとう」なんて、言う資格なんかない。



「だからお前も…俺たちのことは忘れてお前の人生を歩けばいい」


「けいすけ、」


「別にみんなもう寂しがってない。支援もされて園も守られてる。…お前らのおかげでな」


「佳祐…、」



ふっと顔を上げた佳祐は、一歩一歩と私に近づいてくる。

同じように後退れば、積み重ねられたマットに背中がポンッと当たった。


昼休みということもあって、最初は静まり返っていた体育館に生徒たちの足音が徐々に響き始める。



「おーい、佳祐ー?ボールあったかー?」


「ったく、どこにいんだよー」



身動きは両手で囲うように塞がれてしまった。

近づく男子生徒と私たちを阻むものは、体育館倉庫の分厚い扉1枚。



「け、佳祐…?友達が呼ん───…っ!」



柔らかい感触に塞がれているらしい。

私はいま、唇に同じものが重ねられているらしい。



「ん…っ、けいす…っ!」



ファーストキスだとか、初めてはレモンの味がするとか。

そういうものを考えられないくらい。


……なに………これ………、