光を掴んだその先に。





「だからその呼び方やめてって言ってるでしょっ!」


「お嬢はお嬢っすから!」



俊吾だ。


いつも那岐の傍に付いている男で、彼は明らかに私よりも那岐よりも年上だった。

スキンヘッドにちょび髭というアクセントは微妙な組み合わせだけど……。


でも人柄の良さそうな気さくな笑顔だから、いつも那岐に打たれてるのがちょっとだけ可哀想。



「…そんな特別扱いされるような人じゃないのに」



那岐だって俊吾だって、ここにいる全員。

すれ違う男たちは私を前にすると、必ず一歩引くようにペコリと浅くお辞儀をする。


それは私がここの組織を取り締まる組長の孫だという、ただそれだけの理由。



「うーん、確かにお嬢は組長やお頭の大事な娘さんでオレたちにとっても大切な存在っすけど…それだけじゃないんすよ?」


「え…?」


「茶道に華道、剣道だって毎日がんばってる。それはオレたちが一番良く見てますから」



普通の女の子じゃあ逃げ出すでしょう?と、俊吾は屈託なく笑いかけてくれる。



「そういう意味でも、お嬢はやっぱり特別なんすよ」



アロハシャツに金色をしたゴツいネックレス、そんなものにクスっと笑ってしまいそうになる。

人は見かけによらないんだ───と。