いつからこの男が私のことを知っているのか、とか。
そのとき私は少なくともあなたと関わっていたんじゃないか、とか。
質問はやっぱりたくさん浮かぶ。
「ぜんぜん覚えてない…」
「…だろうな。物心つく前には施設に預けられてる」
「うん。…あ、でも」
これは夢なのかなぁ?と思うときがほとんどだ。
それくらい確証的ではない記憶だから。
広いお屋敷で、広い庭で、いつも隣には1人の男の子がいたこと。
「男の子……、私より年上で、いつも私の傍に居てくれた子がいたような…」
微かに目の前の瞳が開かれていること、私はとくに気にしない素振りをして続ける。
「すごく好きだったなぁ…その子のこと。
微かにしか覚えてないんだけどね」
その少年も小さな掌だったけど、そのときの私には一番の安心源。
私が手を伸ばすよりも先に掴んでくれる人。
「…どんな奴だったんだ、そいつは」
「うーん、優しいひと…かな?…その子と手を繋ぐのが大好きだったなぁって」
「…そうか」
その人が大好きだった。
ずっと一緒にいたいと、幼いながらも思っていたように思う。
「今どこにいるのかなぁ。…あ!もしかして俊吾だったりして!」
「それはねえな。あいつはお前がいなくなってから入った」
「えー、じゃあ誰なんだろう」
ねぇ、那岐。
あなたは嘘をつくのが下手だね。
だってそれを知ってるってことは、私がいなくなる前からここにいたってことだ───。



