シャカシャカシャカ───。


無駄のない素早くも繊細な動きは、自分の手じゃないみたい。

この人の手が加わることでこんなにも優しい動きに変わってくれるなんて。



「わぁできたっ!すごい全然ちがう!」



見た目からその違いが分かるほどだ。

きめ細かい泡、ふんわり広がる茶葉の香り。



「ありがとう那───」



バッと振り返ったとき、こんなにも至近距離にいたことを忘れてしまっていて。


サラッと黒い髪が額に触れて、バチッと合う視線。

「ん」と、答えてくれる整った顔。



「うわぁ…っ!」


「おいっ、」



そのままぐりんっと体勢を変えて横へ倒れ込むけど、そこでも支えられてしまっては。

再び引き戻されてしまった。



「っ、」



背中に男の腕が回っている。

力強くて優しくて、女とは似ても似つかない力加減。



「…気をつけろ。せっかく立てた茶をこぼす気か」


「ご、ごめん…」


「ったく…」



手のかかる奴だ───とでも思ってるのかな…。


でもまさか私だって、この人がこんなにも優しい人だとは思っていなかった。

私に向ける眼差しは他とはちょっと違うっていうか…。


自惚れてるわけではないんだけど、そう感じるのだ。