終わった。
終わってしまった。

じわっと浮かび上がる涙の行き先はどうしようか。


しーんと静まり返る部屋に、ポツンとひとり。



「ぅ、わぁぁぁんっ!!振られちゃったよぉぉっ…ぅぅ…っ、やだぁぁぁっ」


「だれが離すかよ」


「なぎ…っ!」



再び現れた那岐は「やっと掴んだってのに」とつぶやいて、また同じように私を膝の上に乗せて座った。

しかしさっきと違うことがひとつ。


その手に持ってるバニラアイス。


それはいつも那岐が買ってきてくれて、私が食べているものだった。

冬のアイスも中々に美味しいことは十分に知ってる。



「これはもう無理やりにでも思い出させるしかねえな」


「……無理やり…?」



確か前もそんなことを言っていたような気がする。

昔も1つのカップアイスをこうして分け合ったよねぇ、なんて話してたとき。



『忘れた記憶は強くぶつけると思い出すって聞いたことがある』



那岐は確かそんなことを言ってた……ような……?



「えっ、やっ、ぶつけるの…!?頭…!?どこにっ!?え、そのアイスを…!?」



そのアイスの角で私の頭に攻撃するとか…?

そんなの絶対しちゃいけないっ!!



「まって那岐っ、落ち着いて…!他にも思い出す方法が絶対あるよ…っ!」


「いや、これしかない。さすがに思い出してもらわねえと困る」



そんな真顔で言われても…!!


しかし那岐は手に持ったカップアイスの蓋を至って普通にパカッと外した。

付属のスプーンですくい、パクっと自分の口へ運ぶ。


「ん、うまい」と、ほころぶ顔。