『でも絃ちゃんにはあまりあげすぎちゃ駄目よ。お腹こわしちゃうから』
『うん。ありがとう雅美姉さん』
雅美は微笑んで宴会場へ戻って行った。
手にはカップアイス。
“バニラ味”と表記されており、至ってシンプルな味付けのものだ。
『なぎっ!これなぁに?』
興味津々に見つめてくる幼子の頬に、そのカップをピタッとくっつけてみる。
『ひゃぁぅっ』と可愛らしい声を上げて、初めて触れた冷たさに期待はもっと高まったようだ。
付属の木製スプーンですくってみる。
絃織も甘いものはあまり食べるほうではなかったため、記憶が正しければ初めて口にするかもしれない。
『……ん、おいし』
まずは自分に一口。
この暑さの中でのひんやりした冷たさだからこそ余計に美味しく感じるのかもしれないけれど、次から次に欲しくなる美味しさだ。
パクっ、またパクっと、少年は自分にご褒美をあげる。
『なぎっ、いともたべるっ』
『こら。あげるから待ってってば』
そうは言っているが、自分優先にしていたのは確かだ。
身を乗り出すように手を伸ばしてくる2歳児をうまくかわしながらも、次は絃の分をすくった。
『はやくっ!なぎ、はやくっ』
『ほら、あーんして』
『あー』と、声を発しながら小さな口が開く。
少しずつ生えてきた乳歯に迎えられ、その中へ優しくバニラアイスを入れた。