───
───────
───────────




「撃たれちまったな…」


「…俺は自分から撃たれに行ったんだ」


「結果こうなってんだ。どっちも変わらないだろうよ」



広い病室には2台のベッドが置かれていて、目を覚ませば同じように片方に寝かされているおやっさん。


どちらが先に目を覚ましたのかすらも分からないが、気づけば義父と息子の会話が繰り広げられていた。

敬語はいらない、そんな空気感が最初からあった時点でどちらも参っているのだ。



「まさか娘に助けられることになるとはな。…天鬼組も落ちぶれたモンだ」


「まったくだよ。組長がいなくなってから終わってる」


「おい、せめて“そんなことない”とでも言ってくれよ。お前も幹部なんだぞ絃織」



俺たちはあのあとすぐに病院に運ばれて、一命は取り留めた。


俊吾への説明、下の者への説明、それはすべて天道の事情を隠してぼやかしたものを伝えた。

そして例の倉庫には最初から金は別の場所へ移動させてあったと、のちに天道は言った。



「なぁ絃織。…俺が昔お前に言ったことを覚えてるか」


「…忘れた」


「嘘つけ」



お前はいつか俺を殺せ───と、言われたことだろう。


うなずいた俺は常に頭の中にその言葉があった。

ただその本当の意味が何なのかと、ずっとずっと分からなかったが。



「おやっさん、俺、人生で3回…光を見てるんだよ」