ポンポン───。
そんな私の頭を陽太は軽く叩いた。
「まぁ、まだこれからいろいろあるだろうね。絃ちゃんの冒険は」
「…耐えれるかな」
「さぁ?薬草と魔除けのそれ持っていけば大丈夫なんじゃない?」
ううん、こんなのいらないよ。
こんなのいらない。
私にはただひとり、ぜんぶを隠すことが下手で上手すぎるあの人がいればいい。
「ずいぶん遅かったけど、なんか見ちゃいけないものでも見ちゃったり?」
「……ううん」
普通にしたい。
普通でいたい。
あんなの見たって、私は那岐を大罪人の息子だとは思わない。
たとえあなたが色んな人にそう呼ばれて、そんな肩書きをずっとずっと背負っていたとしても。
でも私にとって、私にとっていつも那岐は光だった。
「てかキスしてたっ!キスしてたの…!!私見ちゃってね!?」
「わーお。え、どこで?」
「…那岐の部屋近くの縁側」
「だいたーん」
私はそれでも那岐が好き。
やっぱり那岐が好き。
伝えることはできないかもしれないけど、変わらず笑うことくらいはできるはずだ。
那岐が何かに怯えてるなら、「そんなことないんだよ」って言うくらいは。
「てか陽太、いつまでここにいるの!」
「……ずっといてもいいかなぁ」
「…私たぶん朝方までこれ作ってるよ」
「いーよ、俺も起きてるー」
那岐が隠すなら、私だって隠す。
那岐が話さないなら私だって話さない。
───…今はそれでいい。