優しいから赤ちゃんの私のお世話をしてくれたの…?

優しいからぜんぶ我慢してまで私のために生きてくれて、優しいから今だって守ろうとしてくれてるの…?


なんにも、なんにも分からないからこう思っちゃうんだよ。

天鬼に縛られてるのは私じゃない。


天鬼にずっと縛られて、私に縛られてるのは那岐だ。



「…だから言ったじゃん。絃織さんと絃ちゃんだけは無理だって」



部屋に戻った私に告げられた言葉は、まだ奥に隠された何かがあるような気がした。


片手に持つビデオカメラ。

それを観るも観ないも私の自由だ。



「…まだやるの、それ」



私はただ黙って片付けたはずの紫色の玉に糸を通すことしか。

だって今日は眠れそうにない。



「那岐は…ここに来てもっともっと窮屈になったはずなのに……」



それなのにどうして君は笑っているの…?

座卓の端、立てられたその四角形の中に笑う君は。

女の膨らむお腹に手を当てて笑う君は。


どうしてそんなに笑っているのだろう。



「それ、観ないの?」


「…今日は観ない」


「そう…」



あー駄目だ、ぜんぜん糸に通らない。

ガサツってみんなから言われてる私なんだから、こんなの絶対やっちゃ駄目なのに。