最初手にしていたファイルを床に落としてまでも、私は文字を追った。
色褪せた資料は黄ばんでいて所々滲んでいて。
十数年以上前のものだって、すぐに分かってしまう。
「那岐組、銃殺……、犯人は…那岐、慎二」
読むな、読んではいけない。
きっとそんなものたまたまに決まっている。
「───…」
載っている惨い写真に呼吸を忘れてしまったみたいだった。
それは血が逆流する感覚。
血だらけの大きな屋敷、駆け付ける警察官、立ち入り禁止のビニールテープ。
“唯一生き残ったのは息子、ただ1人”
そんな大きな書き出し。
いつ起きた事件か、どの時間か、どうしてそんなことをしたのか、そんなものはどうだっていい。
私はただひとつの名前だけを必死に探していた。
そこに載っていないで。
でも載っているんじゃないの。
そんな思いで頭がぐしゃぐしゃだ。
「駆けつけた男により……息子救出、」
その駆けつけた男って誰…?
すぐにもうひとりの名前だって追加されてしまった。
“犯人の親友だった男、天鬼 剣”
しかしこれらはすべて隠蔽された事件である、なんて。
当たり前だ。
こんな事件、たとえ昔だとしても世間に出ていたならば普通は知ってるはずだ。
こんなにも惨く悲惨で残酷な事件───…。
“助かった者は犯人である男の息子、那岐 絃織(6)”
確かにそう書かれてある。
何度読み返しても、それは確かな名前。
そうじゃないと願って、そうなのかもしれないって疑って。
「……な…、ぎ、」



