光を掴んだその先に。





「そういえば何か私に用があるんじゃないの陽太。そろそろ寝たいんだけど…」


「あぁ、絃ちゃんに頼みたいことがあってさ」


「頼みたいこと…?」



できれば明日にしてほしい。


夏休み中だからって毎日夜更かししちゃってるけど、最近は龍牙組の騒動があったりで屋敷内は少しピリピリしてるから。

今日は私も早めに寝るつもりだった。



「これ、上の人にハッキングしてくれって頼まれた資料なんだけど。終わったら物置部屋に戻しておいてくれって頼まれてて」



渡された分厚いファイル。


それを私に戻して来いと。

そして自分は寝ると、この男は言っているのだ。



「自分で行ってらっしゃい。おやすみー」


「俺、知らないもんその部屋。それにこれ極秘資料だから慎重に扱わなかったら殺されるね」


「…それをなんで私に頼むの」


「だって俺たち友達じゃん?」



確かに物置部屋は1度入ったことがあるから、場所も知っている。

あのすっごい広い書斎みたいなとこ。

でも私の部屋からわりと遠いし、あそこ暗いし夜は怖いのに…。


でも友達とか言われちゃったらさぁ。



「貸し1だよ、陽太」


「もっちろん。俺ここにきて初めて絃ちゃんに感謝したかも」


「素直にありがとうって言えっ!」



ファイルを受け取って部屋を出た。

寝静まっている静かな廊下を、足音立てずに歩く。