「…お前の大切な人が傷つく羽目になるかもな」



少し腕の力は緩まった。

ふぅと一息吐きたい思いだったが、次から次に質問が浮かび上がってくるようなことを言ってくる。


大切な人が傷つく…?どうして……?



「それは…私のせいなの…?」



私が関わるからなの…?

まだぜんぜん信じてないけど、私がその天鬼組の一人娘だから…?

だから私の大切な人が傷ついてしまうの…?



「お前のせいじゃない。ただ、世の中は肩書きに支配される奴ばかりなんだよ」


「なに…それ…」


「俺だってそういう世の中にどっぷり浸かって生きてる。…昔から」



寂しそうな顔だ。

伏せられた睫毛が見とれてしまうほどに長い。


形の良い唇も、高い鼻も。

切れ長の瞳だって、目を奪われてしまうくらいに綺麗。



「行かない……私は…ここにいたい」


「てめえの“家族”が危険な目に遭ったらどうする」


「…まもる、…私が、守るよ」


「できねえんだよ。綺麗事だけでどうにかできる世界じゃねえんだ俺たちは」