「これ貰ってくださいっ」


「なにこれチョコ?あれ、今日ってバレンタインだっけ?」


「ちがうんですが…!でも作ったんですっ」


「へ~、あっりがとー」



キャーキャー囲まれて30分経ったぞおい…。いつまで発進されない車に乗ってればいいの私。

それもこれもすべてはゆるふわパーマ野郎、陽太のせいだ。



「もーー!!うるさーーいっ!早く帰るよ陽太っ!」



窓を開けて大声を放ったとしても黄色い歓声には案の定埋もれてしまうから。

はあ…と、ため息を吐いたタイミングで女の子たちの中からようやく陽太は出てきた。



「じゃーね、プリンセスたち」


「「「きゃ~~~~!!!」」」



なぁーにがプリンセスたちだ。

てか那岐はどうしたの、なんで今日もこいつなの。


最近は那岐が来れないときは陽太ばかりの送迎のため、女子生徒は俊吾のときに比べて那岐並みに集まってくる。


……私は好きだよ、俊吾。



「陽太もさ、答えちゃうから駄目なんだってば。那岐なんか完全スルーだったよ」


「あっれーもしかして絃ちゃんヤキモチ?俺、絃ちゃんにヤキモチ妬かれてもまったく嬉しくないけど」


「……このやろ、」



まぁ陽太の運転も安全寄りだから安心して乗れるけど…。

それにBGMもガンガン流してくれるし、退屈はしない送り迎えではある。



「なんかね、お客さんが来てるらしいよ」


「お客さん?」


「そ、絃織さんに」