「…行かないよ佳祐。私はずーっとここにいる」
だってたくさんの妹や弟がいるんだもん。
そんな簡単には離れられないよ。
家族とは、離れたくない。
たとえ私を待っている本当の家族がどこかにいたとしても。
「残念ながらそれは無理だ」
「っ!!」
バッと振り向いたのは私と佳祐、両方。
気配が何も感じなかった。
部屋のドアの前、寄りかかるように腕を組むスーツ姿の男がひとり。
断りもなく部屋に入り、断りもなく私の手を掴んでくる。
「ちょっと離してっ」
「行くぞ。園長がお前を俺たちに託した」
「…え…、」
そもそも最初からこういう契約だったんだ───と、男は低い声で放つ。
私が16歳になったらこの施設から天鬼家へと戻す。
その代わり、今まで通りひまわり園の支援は天鬼組が続けると。
それが私が預けられたときに園長先生が受けた契約だったなんて。
「私は行かないっ!ここにいる!」
「お前は特別だ。こいつらとは違う」
「特別ってなんなの…!今まで1度も心配なんかしてくれなかったくせに今更でしょ…!!」



