「でも最初、たくさんひどいこと言っちゃってごめんねっ」
行かない、とか。
1度も心配なんかしてくれなかったくせに、とか。離して、とか。
そんな言葉をバンバンぶつけてしまっていた。
「別に気にしてない。言うようになったな、とは思ったが」
那岐は笑った。
はは、と小さな声を漏らして笑った。
「それに友達もたくさん出来てるようで安心した」
まるで那岐は私を育ててくれたお兄ちゃんみたいだ。
お父さんは昔から忙しい人だったらしいし、お母さんも私を産んで数日後にお空の上。
もしかしたらあながち間違ってはいないのかもしれない。
「あの…ちなみに赤ちゃんの頃ってことは……お風呂とか、オムツとか…、」
「…当たり前だ」
「……え。…えっ、え、うそでしょ……!?」
「赤ん坊の世話ナメんな。今更なに言ってんだよ」
それってつまり、もう私は那岐にすっぽんぽんを見せているってこと…だよね……?
たとえ赤ちゃんだったとしても、那岐も子供だったとしても、家族じゃない人に……。
というかこんなにも格好いい人に……。
「最悪っ…!!!忘れてっ!記憶消してっ!いま消して…!!」
「ふざけんな片時も忘れるわけねえだろ」
「変態…っ!!バカっ!!じゃあその記憶だけ消してってばっ!!」
「そんな都合良くできてねえな」
もしこれが14年前の私たちが望んでいた未来だとしても、そうじゃない未来だとしても。
でもきっと過去の私は。
2歳の私は。
こんな未来を見て、嬉しそうに笑ってる気がする───。



