「俺たちが所属する極道一派で、お前の祖父はそこの七代目組長。そして───…」
男はまっすぐに私を捉えた。
ピシッと背筋が伸びる。
その眼差しは、見たことないくらいに鋭い目付きだったからだ。
騙し騙され、暗闇の中、そんな世の中で生きている男の目。
「日本でトップを誇る組織、それが天鬼組だ。どの大手企業もバックには必ず俺たち天鬼組がいる」
おかしいことは山ほどあった。
いつも、常に、誰かに見られていると感じることが昔からあって。
それはストーカーとか危ない人だとか、そういうものじゃなく。
常に誰かに守られている───そう表したほうが正しい。
「ごめんね絃ちゃん…。約束だったんだ、16歳になるまですべてを隠してここで育ててくれと───君のお父さんに」
園長先生、私にとってお父さんみたいな人。
みっちゃん…あなたも知っていたの…?
ずっと顔を伏せている大好きな保母。
でもね、引き取られることに喜ぶ歳はずっとずっと過ぎちゃったんだよ。
「…んで……な、んで……」
お父さんがいるなら。
本当の家族がいたのなら。
「どうしてもっと早く迎えに来てくれなかったの……!!」
「絃…!」



