私の名前は…絃。
彼の名前は、絃織。
同じ漢字が入ってるなぁって、本当はちょっとだけ嬉しかったりした。
そんな偶然が、嬉しかったりした。
「わ、私の…名前を付けてくれたのって…」
「───俺だ。」
ドキドキじゃない。
もうそれはドキドキを通り越してる。
嬉しさで胸がいっぱいだ。
今までも隠してたけど、那岐を前にしてドキドキは常にしてた。
でも今は嬉しくて、苦しくて、嬉しい。
「えぇっ、すごいっ!本当に!?」
「あぁ」
まさか私が生まれたときから那岐は私を知ってたなんて。
それは私にとっても特別だし、那岐にとっても特別だから…だよね…?
『那岐さんは…那岐さんはね。お嬢を誰よりも大切に思ってますから』
『あの人の愛は本物っす』
『那岐さんとお嬢は、誰にも切れない“絃”で繋がってますから』
『お嬢は特別なんすよ』
俊吾があんなにも言ってくれる理由がいつも分からなかった。
那岐はどうして私をそこまで大切にしてくれるんだろうって。
でも今、また少しだけ分かったような気がする。
「ありがとう那岐…!私この名前だいすきっ!!」
ぎゅっと抱きついてみた。
勢いでいける気がした。
恥ずかしさや緊張よりも、今は嬉しさのほうが勝っていたから。



