光を掴んだその先に。





「お前は何も聞いてねえのか」


「…なに、を?」



男はため息を吐いた。
しかし睨んだ先は私ではなく、園長先生。

彼はひぃっと情けない小さな悲鳴を上げて、肩をすぼめる。



「こ、これも天鬼さんから言われてたことなんです…!
そのときまで絃ちゃんは普通の子として育ててくれって…!」


「…ったく、俺の仕事が増えるだけだろうが。おやっさんの野郎…」



いやずっと思ってたんだけど、任命とか仕事とか、おやっさんとか。

なにその言葉…。

聞き慣れない単語ばかりが飛び交う空間から今にも逃げてしまいたかった。



「お前はおやっさん…いや、天鬼組お頭(かしら)である天鬼 剣(あまき けん)の一人娘だ」


「そして天鬼組組長、天鬼 道玄(あまき どうげん)の大事な孫娘なんすよ」



いやいや知らん。
ぜんぜん知らん。

そんな2人つづけて説明されても理解不能に決まってる。


天鬼 剣って誰よ。
天鬼 道玄って、なんだその強そうな名前。


……え、私がその人たちの娘で孫…?


───それよりも。



「……あまきぐみ…?なにそれ」



新発売のグミの名前か何か…?

そんな名前知らないし、そういうのって平日16時からやってる任侠もののドラマでしか聞いたことがない。