光を掴んだその先に。





どうやらこの人は珍しく酒に酔ってしまったようなのだ。

そしてその話の矛先が誰に向いているのかすぐに分かってしまう俺も、この賑やかな場所に酔っているらしい。



「…情?情ってのにも色んな種類があるだろ姉さん」



例えばあんたが俺に向けているものと、他の者に向けているもの。

そして俺が絃へと向けるものと、ごく普通の兄妹が向け合うもの。


そんなもの比べたらキリがない。

そして言葉で表してしまったら答えが出てしまう。



「私は…、私はずっと絃織ちゃんのことが───」


「あーーっ!あれお嬢じゃないっすか!?男にナンパされてんじゃないすか…!!」



俊吾がふらつきながら指を差した先。

いつも着ている若草色ではなく、今日は薄桃色をした着物に髪をほどいた少女が数人の男に囲まれている。


たまにはイメチェンだと、普段ポニーテールに纏めている髪をサラっと下ろして、垂れ下がる藤の髪飾りを付けていた。



「なにぃ!?あっんのゲス野郎共…!!俺のかわいい愛娘によくも───っておい!絃織っ!」



気付けば向かっていた。

掴まれていた腕を簡単に振りほどいてまでも、躊躇わずに走っていた。


そして振りほどいたことに罪悪感は無かった。


それが答えだと、俺は姉さんへ伝えたつもりなのだ。