光を掴んだその先に。

那岐side




よそよそしい、気まずい。

言葉で表すならば、きっとこんな感じだろう。


春休みとなって屋敷にいる時間が増えた絃とは、こうして顔を合わせることも増えた。



「お、おおお、おはよっ」


「…おう」



そして俺も何故かそんなものが移ってしまったのか、どうにも素っ気ない返事になってしまう。

それもこれもあの日からだ。


「大好き」と言われ、俺もそれに応えるようなことを言って。

そして───…いや、あれは単なる気の迷いだ。


……気の迷いであんなことするわけねえだろ、馬鹿か。



「……うまい」


「えっ、本当ですか!?」


「…なんで敬語だ」


「あ、…茶道だから……」



嘘つけ。
いつも普通に話してただろ。

若草色の着物姿で俺の前に正座する絃は、照れたように頬を赤く染めた。


様子がおかしいと茶を立てられるようになるのかこいつは…。

しかしそれはどうも俺も同じらしく。



「わっ、えっ、」


「…俺の勝ちだな」


「いや……そうじゃなくて…」



向かってくる少女の胴へ竹刀を当てた。

それは「トンっ」と優しい音だったからか、道場はしんと静まり返っている。


防具の網目の奥から真ん丸くさせる瞳が俺を複雑そうに見つめてきた。