「……ほんとう、なのか…?」
すぐにうなずいて答える。
「本当に…左頬にナイフ痕があったんだな…?」
「うん…っ」
ギリッと歯を噛んで眉間を寄せて、震わせた拳は固く握られて。
車の走って行った先を見つめた那岐は今までに聞いたことないくらい低い声で放った。
「車のナンバーは見たか」
「よ、横浜だった…」
一応その番号も覚えている。
小さくつぶやいて、私はゆっくり息を吸って吐いた。
とりあえず深呼吸をしなければ立っていられそうになかったから。
そんなにも怒っている那岐を目の前にすると、呼吸さえも忘れてしまいそうだった。
「…那岐…?」
すると伸びてきた手がスッと前髪をすくう。
腫れ物に触れるようにそっと、震える指は長く綺麗なのに男の人のものだ。
そして今は完全に塞がっている傷痕をなぞった。
「き、気持ち悪いよね……女の子なのに顔に傷があるなんて…」
へへ、と笑ってみたって返事はない。
でも今は痛くもなんともないんだよ。
ぜんぜん大丈夫なの。
だから那岐、そんなに泣きそうな顔をしないで。
「こんなの前髪で隠せるしっ、逆に格好いいなぁって最近は思え───…っ、」
強く強く引き寄せられた腕の中。
震える腕、ぎゅうっと顔を埋めるように首筋にかかる息。
くすぐったいのに落ち着いて、それなのにどこか懐かしくて悲しい。



