「那岐(なぎ)さん、もしかしてこいつが───うぐっ!!」
「おやっさんの娘に向かって“こいつ”はねえだろ。慎め俊吾(しゅんご)」
「へ、へい…!失礼しました…!!」
なに…?なにごと…?
“しゅんご”と呼ばれた片方は“なぎ”と呼ばれたスーツ男に殴られ、ペコペコと頭を下げている。
そんなものを見つめて子供たちはもっと大泣き、園長先生は口から泡を吹き出しそうだった。
「中へ入れてくれるか。お前と話がしたい」
「……え……私…?」
「天鬼 絃。…お前にずっと会いたかった」
どうして私の名前を知ってるの…?
私に会いたかった…?
ちがうよ、私が会いたかったのは心優しい白馬に乗った王子様なの。
こんな黒ベンツに乗った悪者じゃなくて。
てか、そもそもあなたどちら様ですか……。
「あんたが園長だったか」
「は、はいぃぃっ」
園長先生…もっと威厳を持とうよ。
あなた、ここのお父さん的立ち位置ですよ?
ほらもう足ガックガクだし……まるで生まれたばかりの子鹿だ。
すると男は園長へ、何やらボソボソと耳打ちをした。
その瞬間、ハッと園長は目を見開いてペコリと頭を下げる。



