前に佳祐が1度だけ父親に会ったときの話をしてくれたことがあった。
体育館倉庫で、冷たい空気の中。
そのとき彼が言っていた言葉を思い出した。
『それが父親かは分からないけど、』
『帰宅途中の俺に話しかけてきた男がいてさ、関わったのはそれだけで、でも…』
『似てたんだよ、俺に』
一瞬だった。
ほんの一瞬、サングラスもハットも外した顔が見えたとき。
───似てるって、思った。
「…でっかくなったな、絃」
このひとは……。
この、ひとは………。
私が小さなときからずっと待ち続けていた人なんじゃないか。
私のお父さんはどこにいるの?って、いつも園長先生やみっちゃんに聞いてたっけ。
「一目見て分かった。…美鶴に似てる、だが俺にも似てるんだ」
それはお母さんの名前でしょ…?
この人たちと関わってからずっとずっと聞いてたから知ってるよ。
「俺たちの可愛い一人娘だ…ってな」
どんな反応をしたらいいか分からないから、苦しい腕の中で少しだけ顔を斜め上へと向けてみた。
そこには瞳を潤ませて優しい顔をしている那岐がいて、俊吾は泣いていて。
気づけばその背中にぎゅっと腕を回してしまっている私。



