「ん?お前が噂の彼氏か?」

「そうですけど」

「ははっ、独占欲の強い野郎だ」

「ごほんっ。勝負の時間ですわ。移動してくださる?」

「あっ……はい!」

「はい」

 朧ちゃんのお母さんの言うことを利き、勝負する、道場らしき場所に連れて行かれた。

***

 試合が始まる。

「「よろしくお願いします」」

「さぁ莉乃、来い。本気でいいんだぜ?」

「本気……?」

 本気……。

「うーん……周くん、あれ使ったら怒る?」

「だめだよ。でも——」

「ははっ!よそ見してんじゃねぇよ〜」

「ふっ」

【side 葉月】

「ははっ!よそ見してんじゃねぇよ〜」

 こんな華奢なヤツ、どうせ大したことねぇんだろ?

「ふっ」

「っ!?」

 あっけなく蹴りを弾かれる。

「莉乃、負けそうになったらね?」

「はーい」

 な、なにがだ?

 怖い。怖い怖い怖い怖い……!!

 ニヤニヤと笑みを浮かべているが、目が笑ってない。

 そして、殺気を放ってないから余計に怖い。

「……あのっ……本気出していいんだよ?」

「っ!」

 充分な蹴りはお見舞いした。

 なのになぜだ?