【ガーネット16歳】

久し振りに夢を見た。
それは幼い頃、時々見ていた夢。

真っ赤な辺り。
そこはおそらく戦場で、武装をした人や馬に乗った人が戦っている。
剣と剣がぶつかり合う金属音、歓声、怒鳴り声、悲鳴。

私は誰かに守られるように、抱き締められていて……。
でも、何が起こっているのか気になって……。
その腕の隙間から、見てしまうの。


いつもならそこで目が醒めて、ハッキリとしない夢の続きが……。
初めて、その先が見えた。

腕の隙間から覗いた、その瞬間。
私の瞳に映るのは戦い合う、二人の男性の一騎討ち。

青い髪の男性の剣が、紅い髪の男性の左肩を貫くの。

青い人の、勝ちーー。

そう、思った。

……でも。
でも、ね……っ。

……
…………。


「……ネット……ま。……ガーネ……様?
……、ーーガーネット様ッ!!」

名前を呼ばれて、私はハッとした。

「お疲れでございますか?ガーネット様」

椅子に座って、前のテーブルに頬杖をついて寝ていた私に声をかけてくれたのはメル。

「っ……、ごめんなさい。
少し休憩を、って思ったらつい寝ちゃったみたい」

心配そうな彼女に舌を出して微笑むと、私は自分の今の状況を思い出した。

私が今居るのは、水の国に近い場所に造った炎の軍が滞在する砦。
これから始まる水の国との戦に備えて進軍しやすいように、ゼアス様が築いた砦だ。


炎の国と水の国は昔から対立していて、未だにその(わだかま)りが解ける事はない。
今から10年くらい前に、炎の国は一度水の国の砦を落としたのだが、本土までは攻め込めず失敗に終わり……。その際に生き延びた王子を有能な家臣達が(かくま)って密かに育てていたという話。
今はその生き残りの王子が水の国の王となり、同盟国の風の国達に支えられて勢力を伸ばしている。
全ては炎の国に復讐する為にーー。