《お、おちょくるのも
いい加減にし…》

と、動揺しながらも
強くいい放とうとした。

そのとき、俯いた彼が
近づいてきて、私の手を握った。

“違う!違います!全部本気で、
全部本当で…それで、気付けたんです。
僕、バイなんだって…あ、
あなたが、それを、教えてくれたんです”

やっと、顔をあげたカレと
目があった。
私は、動揺していた。
何も言えないでいた。

カレは今にも泣き出しそうな、まるで、
子犬のように、うるうるとした瞳で
こちらをまっすぐと見ていた。

私は、言い返せる言葉がなかった。

沈黙は、数分間続いた。

そして、やっとでた言葉が

《バ、バイ…》

私は、眉間にシワを寄せながら
モヤモヤした感情を抑え、
カレの言葉をただただ復唱した。



それから、
握られたカレの冷たい手を、
ただただ見つめた。