「いよいよ、イリアム王国です」

そう宣言したイアンに、一緒に乗り合わせた一同の表情が固くなる。ここにいる全員が、本音では上手くいくはずがないって思ってない?その筆頭が私なんだけど。
結婚に向かうというより、お葬式に向かっているようなこの車内。心が擦り切れそうだ。


「夕方には、城に到着する予定です」

国王陛下に対面するのは、もう数時間後に迫っている。とりあえず、王家の人達は大体把握した。
名前は……フルネームじゃなければいけそう。困ったら〝様〟〝陛下〟〝閣下〟とかなんとか付けて、乗り切るしかない。

あとは、対面の時の作法を間違えなければ大丈夫なはず。



それらしばらくすると、辺りはなんだか賑やかになってきた。

「イリアム王国の王都に入りました」

イアンの言葉に、外の様子をチラリと見遣る。彼によると、この馬車の外観から、サンザラ王国の王女様が乗っていることは知られているらしい。もちろん、騎士団長であるエドワードの元へ嫁いできたことも。

耳をすませば、祝福する声が聞こえてくる。王都なので、普段から賑やかな場所ではあるけれど、国民あげてのお祝いムードになっており、今日は普段以上の賑やかさをみせているらしい。