身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています

エディが本気でなじっていないことぐらい、ちゃんとわかってる。


「ごめんねぇ」

苦笑して謝ると、狼は〝フン〟と鼻を鳴らして、その大きな頭を私の肩口に擦り付けてきた。この行動は、どうやらマーキングらしい。自分の匂いを擦り付けて、この人は俺のものだと主張しているのだ。

漆黒の毛が肌を掠めるのは、けっこうくすぐったい。けれど、こんな行動一つにも、私の心は満たされていく。


『今夜、もっと癒してくれるなら、この後も退屈な事務仕事を頑張れる』


凛々しい狼の発する言葉とは思えない……
思わず昨夜の寝室でのことを思い出して、頬を真っ赤に染めた。

〝夜、癒す〟とは、つまり……


「団長、エロ親父ならぬ、エロ狼になってますよ。顔だけで、なにを言っているのか察しがつくくらいに」

呆れ顔で言い放つバーンハルドに、ますます赤くなる私。エディはそんなことおかまいなしだ。


『羨ましいだけだろ』

なんとも大人気ない一言を部下に投げ付けると、狼はすくっと立ち上がった。そのまま、私の頭に頬に口付けをしていく。

しばらくしてとりあえず満足したのか、〝はあ……〟と盛大なため息を吐いて、ブルルと体を振るった。


「頑張ってね」

見送る私に、ニヤリとした狼。

『頑張るのは、サーヤの方だぞ』

「うっ……」

今夜は寝かせてもらえないかもと、覚悟を決めた。きっと明日もまた、寝不足だ。








END