身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています

暗闇の中、さっと森に目を走らせた。最後にこの思い出の場所に来られただけでも十分。ここには、この人達も本物のソフィア王女も知らない、私とエディだけの思い出が溢れている。

ああ、動物達だけは知っているけれど。
思わずクスリと笑いをこぼすと、クラリッサが咎めるように見てくる。

「さや香様。城の外に出たからといって、気を抜かないでください」

相変わらず、私に向けられる言葉には温度がない。


レスターを先頭に、音を立てないように足を進める。嫌な緊張感に、汗が伝っていく。



「誰だ」

芝生の中頃まで来た時、突然投げつけられた鋭い声に、4人共ピタリと足を止めた。どうやら見つかってしまったようだ。
背後から近付いてくるのは、複数の足音。振り切ることもできなさそう。


「サンザラの侍女、クラリッサでございます。夜分にすみません。一度、国に帰るように言われて出てきたのですが、なに分広いお城なので、道に迷ってしまいました」

この状況で、これほどまで堂々とでたらめを言ってのける彼女は、ある意味すごい人だと思う。


「道に、迷う?」

チラリと見れば、駆け付けたのは2人の騎士で、クラリッサの話に疑わしげに眉をひそめた。