「ソフィア様。こちらにお座りください」


私のことを〝ソフィア様〟って呼ぶのは、ダーラに代わって私の身の回りの世話をしてくれるポリーだけだ。ダーラは、ソフィア王女の元へ行ったっきり。

クラリッサは、数回婚儀でのマナーをレクチャーしてくれたけど、その都度〝ソフィア様に恥をかかさぬよう〟と、口酸っぱく言ってくる。
全てを教え終わると、〝それでは〟の一言で姿を消した。たぶん、イアンの補佐に専念しているのだろう。
彼女は最後まで、私という存在を認めていなかったように思う。

イアンに至っては、疎ましく思ってしまうほどしつこく、入れ替わりの手筈を確認してきた。しまいにはこちらの気力も削がれ、全てにおいて〝はいはい〟と空返事をしていた。

レスターは、最初から変わらない。元から言葉を交わすこともなかったし、私にとってはいないも同然だ。


婚儀当日というのに、サンザラの人間は今、私の周りに一人もいない。