「実は……本物のソフィア王女が無事に保護されて、今、イリアムに向かってるの」

エディの目元に、不機嫌そうな皺が寄る。

「人身売買が目的だったみたいで、幸いなことに、傷一つ負ってないって。本当によかった」

嫁ぐ前に穢されたなんて、エディにとっても許し難いことだろう。


「そうか」

そう言って目を伏せたエディ。彼が今、一体なにを考えているのか、私にはわからない。
それ以上、彼の顔を見ていられなくて、俯いたまま続けた。


「婚儀の日は、たくさんの人が集まるんでしょ?それに紛れて、ソフィア王女を招き入れるつもりなの。夜までに、私と入れ替わるって」


「…………なめられたものだな」

「え?」


ますます不機嫌になるエディ。

「そんな子ども騙しな……子どもすら騙せなさそうなやり方で、この俺をやり込めようとするなんてな。ほとほと呆れる。あの国、今すぐ潰してやろうかと思えてくる」


物騒な物言いに、思わずエディを見た。
怒りに顔を歪ませていても、彼の気高さは損なわれないから不思議だ。