身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています

『サーヤ、歌って』

「サーヤ?」

どうしてユキが私の愛称を知ってるの?
腑に落ちないで戸惑っている私に気付かないのか、再び『歌って』と、ユキが前足でトントンと突っついてくる。ついでにしっぽも足を叩いてくる。

迷いはあったものの、森を見据えたまま、探るようにして小声で歌を口ずさむ。
一瞬、なにかがキラリと光ったのを見逃さなかった。

「なにかいるの?」

やっぱり誰も答えてくれない。ユキがしっぽを振るのみ。

緊張感を高める私に対して、周りの動物達が一層リラックスし出したように感じたのは気のせいじゃないと思う。だって、ストレッチをするように体を伸ばしたり、寝そべったりしはじめてるから。


再び森に視線を向けた。
カサッカサッと、草を踏む音が微かに聞こえてくる。決して軽くはなさそうな音が、徐々に近付いてくる。同時に、暗く大きな影が見えた。


「な、なに?」


思わず振り返ってレスターを見たけれど、気が付いていないようだ。ううん。寝てない?絶対に目を閉じてるわ。