身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています

「そういえば……」

ちょうど一曲歌い終えたところで、私の足の上で箱座りする猫に声をかけた。『なに?』とでもいうように、気怠げにしっぽを振った。機嫌は悪くなさそうだけど、ちゃんと聞こうという熱心さはないみたい。


「名前は?なんていうの?」

『そんなの、ないよ』

うーん。それでは不便だ。こうして出会ったことにも、私は運命を感じているし、今後も癒しに来て欲しい。
毎回、〝猫ちゃん〟〝ねえ〟なんて呼びかけるのは、あまりにもよそよそしすぎる。

「じゃあ、ユキって呼んでもいい?」

『単純』

なんて呆れてたものの、しっぽの振り具合からすれば、ダメってわけではなさそうだ。

「ユキ」

試しに呼んでみれば、声に出して返事はしてくれなかったものの、しっぽの振れが勢い付いた。決まりだ。