身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています

先日も訪れた中庭の芝生の一角に、食事の用意をすると、ダーラは下がっていった。今日はパンとスープのみという、簡単なもの。あまり食欲がないことが伝わっているのだろう。スープが具沢山なあたりは、私の体調を気遣ってのことかもしれない。
ニセモノの王女だというのに、気を遣わせてしまうのは申し訳ない。


シートに座ってパンを片手に持ったものの、なかなか食べる気がしない。


「今日は来てくれるかしら?」

食べる代わりに、小声で歌を口ずさんだ。目を閉じていると、すぐになにかの気配を感じはじめる。小走りに来るものもいれば、そろりそろりと近付いてくるものもいるようだ。

足に手をかけられたのを合図に、そっと目を開けた。


「今日も来てくれたのね」

足によじ登ってきたのは、私が助けた猫だった。他にも、数種類の鳥やうさぎもいる。それぞれつぶらな瞳を、一心に私に向けている。


『元気ないね』

そう声をかけた猫は、まるで私を心配するような視線を向けてくる。

「そうかも……うん。いろいろとね、悩んじゃって」

『ふうん』


一応、探るような仕草を見せてくれるものの、そこは気まぐれな猫のこと。それ以上、慰めの言葉も励ましの言葉もくれない。
私も、来てくれただけでいいかと納得して、鼻歌を歌った。