「金城先生、またですか?」

レッスンの時間になり、師の元を訪ねると、タブレットを片手に目を閉じる恩師の姿があった。


「ああ、月森。もうそんな時間か?」

「はい……って、それ、去年のコンクールの時の映像ですよね?」

「そうだ。俺はこの、月森のアリアがお気に入りなんだよ」


月森さや香、17歳。
都内の高校の音楽科に在籍し、声楽を学んでいる。
将来の夢は、世界を飛び回る声楽家。

中学生の頃、声楽の指導者として有名な金城先生と出会い、単身で上京した。