その時、舞台の上から、観客席から、皆の視線はただ一点に向けて注がれていた。

―突然の椿野要の登場―

辺り一面、し~んとしている。そして、その沈黙をまず破ったのは、舞だった。

「…一体、誰?」

要は倫子を支えたまま、さらっと言ってのけた。

「王子だよ。」

出演者、観客。一人を除いて、一同、時を同じくして、えっ、という表情をした。
校長先生も、驚いた表情をしながらも、そのまま飛入り参加の要を興味深い目で見つめていた。
舞は、しばらく呆然としていたが、

「な、何言ってんのあんた!そんな、ロックバンドのボーカル風の王子様なんているわけないでしょ!」

観客も、さすがにそれはないと言う表情で、うんうんと舞の意見に賛同した。
舞は、周囲を見渡し、観客を後ろ盾につけた事を確認した後、

「ほら、回りの反応をご覧なさいな。みんな不自然だっておも…」
「王子がこんな服を着ていたら悪いのかよ、王子も思春期ぐらいあるんだよ!」

どっと観客席から笑いが起こった。今度は、要の意見に対して、観客はうんうんとうなずいた。