チョコなんてあげないっ!



────ビクッ!


いきなり後ろから男の人の声が聞こえて、あたしの肩は跳ね上がる。


もしかして、あたしが自販機の下に手を入れてたから、怪しいと思われたのかな!?


「いや、あの、これは……コーンポタージュを買おうと思ったら、500円玉を自販機の下に落としてしまってですね……って、広斗?!」


しゃがみこんだまま、声をかけてきた人の顔を恐る恐る見上げると、それは広斗だった。


「この寒空の下、制服姿でコートも着ずに一体何をやってるのかと思えば。お前も間抜けというか、ほんと見てらんねぇ」


はぁ……とため息をついて、あたしの横にしゃがみこむ広斗。


「日も暮れて、辺りも真っ暗だっていうのに。危ねぇだろ。女子高生が1人でこんなところにいたら……」


広斗、もしかして……心配してくれてるの?


500円玉を取るのに必死で気づかなかったけど、辺りはもうすっかり夜になっていた。