例えば、〝十個たまったらそれは恋です〟というスタンプカードがあるとして。
そのスタンプは誰が押してくれるのだろう。

自分の気持ちなのに、客観視できない自分が判断して押印するのは間違いが起きそうで不安なのだけれど、他の方はその辺どうしているのだろう。


「……それを俺に聞くのか?」

暗い車内。運転席でハンドルを握る東堂さんが困ったように眉を寄せ私を見た。

日曜日のお部屋ランチから三日が経った水曜日。
会社を出たところで東堂さんから電話が入った。

『ちょうどこっちも片付いたところだから飯でも行くか。車で迎えに行く』と誘われ、急遽駅前のロータリーで待ち合わせた。

東堂さんが乗ってきたのは黒い大きな四駆車。車高が高いので、乗るのにだいぶ手間取ってしまい少し恥ずかしかった。
次回があった時のためにすんなり乗り込めるよう、ジョギングだけじゃなく、腕立て伏せとスクワットもルーティンに組み込もうとこっそり決意した。

暗い車内で光るのはナビとメーターゲージ。革張りの座席はまるでソファみたいに座り心地がよくて、私の知っている車とはかけ離れていた。

車内空間も広く快適で、きっと東堂さんが気に入っている部分は他にたくさんあるのだろうけれど、私から見てもとても乗りやすい車だと感じた。

視線は前に向けたまま左手でシフトレバーを操作する姿がカッコいい。レバーを握る手は節だっていて、私のとはまるで違った。やっぱり大きな手だなぁと眺める。