「その〝誰か〟は、俺でもいいんだよな?」

私が「え」と間の抜けた声を漏らすと同時に、東堂さんがグラスをテーブルに置き私と向き直る。
私が腿の上に置いていた手をとった東堂さんは、それをダンスに誘うような握り方に変え、私をじっと見つめた。

「今日は、あの見合いの続きをするつもりできた」
「……続き?」
「土曜日、あんな態度をとったことは謝る。もし今後、気に障ることがあったらすぐに言ってほしい。直せるところは直す」
「え……え?」

どうして突然こんなことを言われているのかが理解できずに困惑する私に、東堂さんが続ける。

「ひなたが俺を信用できるようになるための努力をする。だから、俺と恋愛してほしい」

間もなくして運ばれてきたほっぺが落ちそうなほどおいしい料理。三十六階の高級レストラン。目の前に広がる綺麗な夜景。

おいしいワインに、しっとりとしたおしゃれな雰囲気。

どれも酔ってしまいそうなほど素敵なのに、まっすぐに向けられる東堂さんの眼差しが群を抜いて魅惑的に思えた。

低く艶めいた声も、綺麗な顔立ちも、髪のひと筋さえどうしようもない魅力として映るせいで、胸がドキドキしすぎて呼吸困難になるかと思った。