「だから、渡さん。私に優しくしてくれる必要はありません。渡さんが優しいと、私は甘えちゃうので。そんな資格ないのに、寄り掛かっちゃうから……冷たくしてください」
入社してから、どれくらい渡さんに助けられただろう。
私がコネ入社だと同期に知られたときも、渡さんは間に入って仲をとりもってくれた。
仕事で上手くいかなかったときも、私の暗い表情に気付いて元気づけてくれた。
いつも、背中を押してくれた。
そんな渡さんを傷つけているのが耐えきれずにうつむいたとき、渡さんが笑った。
「なんだよ、それ。俺、振り向いてくれない子には優しくしないような薄情な男だと思われてるってこと?」
顔を上げると苦笑いする渡さんがいて、首を振る。
「あ、いえっ、そういうわけじゃなくて……だって、渡さんがツラいのがわかるから。渡さんがとても優しい人だって知ってます。それでも、今、私相手に普通に優しく接するのはきっと……絶対に苦しい」
二ヵ月前の私だったら、そうは思わなかったかもしれない。
でも、もう、誰かを好きになる気持ちを知ったから……だから、渡さんがどれだけ苦しいかが想像できる。
キュッと唇を噛みしめてから、眉を寄せ微笑む。
「でも、そんなのは建て前で、きっと私は嫌なんです。渡さんに優しくされればされるほど、気持ちに応えられない自分がひどく思えて苦しくなるから。だから私のわがままなんです」
自嘲するように笑った私を見て目を見開いた渡さんだったけれど、そのうちに笑顔になり……。
「苦しくなってよ」
そう言った。



