御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない



「今回の事、ありがとうございました」
「え?」
「色々と手を貸してもらったのに、きちんとお礼が言えていなかったので。今日は私がご馳走するので、好きなだけ食べてくださいね」

笑いかけると、渡さんは私をじっと見つめたあと口を開いた。

「俺にしておけばいいのに」
「え……」

びっくりして声を失った私に、渡さんが続ける。

「これからも東堂さんと付き合い続けていけばもっと色んなことが起こるかもしれないし、そんなの疲れるだろ。その点俺なら世間一般で言うところの〝普通〟の付き合いができる。だから、俺にしておけば」

こちらを真っ直ぐに見つめる渡さんの瞳は真剣そのものだった。

いつかもされた告白。あれからも渡さんは普段通りの雰囲気で接してくれていた。けれど、今、再度告白されたことで、あの時から今日まで渡さんが私を気遣ってくれていたんだと気付く。

告白前と同じように接して欲しいと望んだのは渡さんだ。
だから私も意識しないよう心掛けていたけれど……その間も、渡さんはなにも思わなかったわけではないだろう。

なのに、そんなのひとつも態度に出さずにいた渡さんの気持ちを思うと、胸の奥がズキンと鈍く痛んだ。
それでも、答えを出さずにはいられないと、意を決して口を開く。

「正直に白状します。私、きっと東堂さんと出逢わなければ渡さんを好きになってました。渡さんは優しいし、一緒にいて楽しいし、とても素敵な人だから。でも……今の私は東堂さんが好きです」

今、ツラくて痛いのは渡さんのはずなのに、涙がこみ上げてきそうになる。
好きだと伝えるのも勇気がいるけれど、好きだと言われそれを断るのも同じくらいの覚悟が必要だと知る。

息がつまりそうになりながらも、渡さんを見つめた。