「もう大丈夫なので、謝らないでください。それに、東堂さんはなにも悪くありませんし、海外から駆けつけてくれたじゃないですか」
一日分の仕事を前倒しして、無理してまで帰国を早めてくれた。
迷惑をかけたのはむしろ私の方だ。
だから、もうそんな顔はしないで欲しいと伝えると、東堂さんは自嘲するような笑みを浮かべた。
「今まで、自分の置かれた立場についてそこまで悲観的になったことはない。仕事も、忙しさはあってもツラいとは思わない。でも……今回初めて自分の立場を恨んでやるせない気持ちになった。俺は、ひなたが思い悩んだり怖がったりしている時にそばにいられないのは嫌だ」
真面目な顔に、息をのむ。
東堂さんは、私を見つめたまま続けた。
「ひなたのことは俺が守りたい。ひなたの無事が最優先だからと思って、渡に頼んだりもしたが……本当は俺が自分の手で守りたかった」
東堂さんは、最後、悔しそうに眉を寄せる。
その表情が、私を大事だと物語っているようで、嬉しさがこみ上げた。
「東堂さんは私を守ってくれてましたよ」
そう告げると、東堂さんが「気を遣って慰めなくてもいい」と笑うので、首を振る。
「東堂さんの電話やメッセージに、いつも励まされてました。好きな人がいるってだけで、こんなにも前向きになれて、気持ちがふわふわ浮かれるものなんだって、初めて知りました」
着信履歴に東堂さんの名前があるだけで嬉しい。
東堂さんとのメッセージのトークルームが、何度上にスクロールしても一番最初にたどり着かないほど埋まっているのが嬉しい。
送ってくれる写真を、東堂さんが私のために撮ってくれたのだと思うと嬉しい。
ひなたって名前を呼んでくれるだけで嬉しい。



