「だって、そこまでひどいことをされたわけではありませんし、私も言い返しましたから。なので見逃します。……あ、でも、母のことを侮辱したことだけは、きちんと発言を撤回して謝罪してくださいね。落ち着いてからでいいので、ちゃんと謝りにきてください」

准さんは、おもしろくなさそうな顔をして私から目を逸らす。
それでも、私をドアに押し付けていた時のような怖さはもう少しも感じないどころか、子どものような態度に少し笑みがこぼれる。

私の隣に立っている東堂さんを見上げ、「それでいいですか?」と聞く。
東堂さんは申し訳なさそうに「悪いな」と言い、彩佳さんは「ありがとう」とお礼を言った。

「こいつのことは、責任を持って私が監視するし今後面倒かけるようなことはしないから。一筆書かせて送るわ。この先、ひなたになにかしたら今回のこと恐喝罪として訴えてくれて構わないって」
「いえ、そんなおおげさな……」
「けじめだから。それに、今回のことでさすがに准もわかったと思う。自分の行動が晃成にどれだけ迷惑をかけるかってことに」

真面目な顔で言った彩佳さんが、ややしたあとで納得いかなそうに眉を寄せ首を傾げた。

「あとそれ……部屋着? ダサすぎない?」

私が着ているのは、オフホワイトのプルオーバーのパーカーに、濃いグレーのスウェット。

「ラフではありますけど……え、ダサいですか?」

不安になり眉を寄せた私に、彩佳さんが笑った。