「おまえがひなたをどう思おうが自由だ。だけど、俺の前では二度と侮辱するような発言はするな。不快だ」
東堂さんがあまりに冷酷な雰囲気を出すので、再び場をとんでもない緊張が支配し出した時、着ているパーカーのお腹のポケットに入れっぱなしにしてある携帯を思い出しハッとする。
すっかり忘れていた携帯を取り出し、准さんに画面を見せるように持ち上げた。
「准さん。今までの会話はすべてこの電話の相手にも聞こえています」
「なに……」
通話時間は九分四十八秒を刻んでいる。
それを見た准さんが目を見開いたのを確認してから続けた。
「警察だったら、手紙と合わせて恐喝罪として捕まるかもしれません。逮捕なんてことになれば、あなたが大事にしたがっている東堂の名前は汚れます。東堂さんが今まで頑張って作り上げてきたものが一瞬で崩れます。ご自身がそういった行動をとられている自覚はありますか?」
ゆっくりと聞くと、準さんが唇をかみうつむく。
その顔にショックや後悔が広がっていくのを見て、ひとつ息を吐いた。
「警察じゃありません。この電話が繋がっている先は……」
そこまで言ったところで、こちらに走ってくる足音に気付く。
カッカッというヒール音を響かせて登場したのは彩佳さんで、こちらに走り寄ってくる彼女の顔には怒りが広がっていた。
「准!」
呼びながら飛びかかるようにして准さんの胸ぐらを掴んだ彩佳さんに、准さんは焦ったような声を出す。



