御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない



「ありがとうございます」と涙声で言った私に微笑んだあと、東堂さんが准さんに視線を落とす。
まだ地面にお尻をついたままの体勢の准さんは、顔を歪めて胸のあたりを手でさすっていた。

「まだ痛いのか? あれくらいで痛がるようじゃ男として情けなさすぎるだろ。少しは鍛えたほうがいい」

東堂さんが言うと、准さんが顔を上げる。
その顔は不貞腐れた子どもみたいだった。

「痛いに決まってんだろ! 思い切り蹴りやがって!」

え……蹴ったって、東堂さんが? 
さっきまでの状況を思い出すと、私から准さんをはがした東堂さんが、そのまま准さんの胸を蹴ったと……そういうことだろうか。

え。
東堂さんが?

信じられない思いで見ていると、東堂さんが准さんに言う。

「中学の頃のおまえならかわせてただろ。空手歴はおまえの方が長いんだから。いつまでも外に出ないで部屋のなかばかりにいるから弱くなるんだ」

そこで一度切った東堂さんが、「准」と真剣な声で呼ぶ。

「おまえの現状は彩佳から聞いてる。その上で、今回の件は見逃せない。わかるな?」

准さんは、きつく歯を噛みしめ東堂さんを睨んだ。

「わからねぇよっ。なんでそんな女を大事にしてるんだよ! どこにでもいるような金狙いのずる賢い女……」
「黙れ」

ピシャリとした声は、ただ聞いているだけの私ですら怖くなるようなものだった。
冷たい眼差しを向ける東堂さんに、准さんはうろたえ目を泳がせる。