御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない



「ひなた、大丈夫か?」

伸びてきた手が頬に触れようとするのに気付き、咄嗟に体が強張る。
今の今まで場を包んでいた恐怖や緊張のせいだった。

拒絶するような態度になったことをすぐに謝ろうと顔を上げたけれど、ツラそうに表情を歪めた東堂さんは「気にするな」と、ゆるく首を振った。

「すみません……自分で思っていたよりも、怖か……緊張、してたみたいで」

胸の前で両手を握り締めようとして、初めてその手が震えていることに気付いた。
自分の手の冷たさにも驚く。

「いや、知らない男に怒鳴られて掴みかかられていたんだから仕方ない。顔も真っ白だし、声も震えてるな。……気分は大丈夫か?」

私に触れようとはせずに優しく聞いてくれる東堂さんにうなずく。

「はい。声も体も、勝手に震えているだけなので……その、気にしなくて大丈夫です」

本当に心配そうな顔で見てくるので言うと、東堂さんは「そういうわけにはいかない」と困ったように笑った。

会ってから見る初めての笑顔に……柔らかい声に、ようやく支配されていた緊張から少し解かれた気がした。

「あの、帰国は明日のはずじゃ……」
「ああ。その予定だったんだが……ひなたのことが心配だったから、最終日の予定を繰り上げて、早めに終わらせた。空回りならそれでいいと思いながら空港から車を走らせてきたんだが……間に合ってよかった」

本当に心の底からホッとしたような顔で言われ、胸が締め付けられる。
仕事を必死にこなして息をきらせてまで駆けつけてくれたことが嬉しくて、涙がにじんだ。