御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない



「そういうことなので、私は引きません。でも……ひとつ、聞きたいんですが。准さんは、なにが欲しくてこんなことをしてるんですか? 私を脅して東堂さんと別れさせたとして、その先に准さんの欲しい未来があるんですか?」

別れさせればそれで満足なのか。
それとも、別の目的があるのか。

パッと答えが出てこないのか、准さんは、ここにきて初めてうろたえているように見えた。

「未来とか、そんなの……別に、おまえには関係ないだろ」
「関係ないです。でも、関係ないのに強引に関わってきたのは准さんの方ですから」

負けたくない。
ただその一心でいたのだけれど、アドレナリンが出すぎていたのかもしれない。

准さんを落ち着かせる、という当初の目的を忘れ、気付けば逆に興奮させてしまっていた。
しまった、と思った時には、険しい顔つきになった准さんが私の肩を掴んでいた。

「痛……っ」

勢いよく押され、背中と後頭部がドアにぶつかる。
そのままドアに押し付けるように私の肩を掴んだ准さんが怒鳴るように言う。

「偉そうに言うなよっ! ごちゃごちゃうるさいんだよ! 俺が言う通りに、おまえはただ晃成と別れるって言えばそれで――」

もう、怖くて准さんの顔は見られなかった。
けれど、目をギュッとつぶって体を強張らせて縮こまっていると、そのうちに准さんの声が不自然に途切れた。

私の肩を痛いほどの力で掴んでいた手も勢いよく離れたので、どうしたのかと顔を上げて驚く。
准さんはなぜか数メートル離れた場所でお尻をついていて……私の前には、肩で息をしている東堂さんが立っていた。

なにが起こったのかわからない。でも、恐怖から解放されたことだけはわかりやっと呼吸できるようになった私を、東堂さんが見る。

東堂さんの息はまだ整っていなかった。