「晃成はすごいんだよ。だから付き合う相手は選ばなくちゃダメだ。もっと東堂と同レベルの名前を持つ女じゃなきゃ……おまえなんかじゃダメなんだよ。晃成が必死になって守ってる東堂の名前を、おまえみたいな女に汚されるなんて冗談じゃない」
長い前髪から覗く目が、私を睨みつける。
「今まで晃成は誰が相手でも夢中にならなかった。だから俺も安心してた。なのにおまえにだけは違うから……おまえ、どんな手使ったんだよっ」
突然声を張り上げた准さんに、びくっと肩が跳ねる。
准さんはひどく情緒不安定に見えた。
感情がすぐに沸騰するのは、元からなのかどうかはわからないけれど、とにかく落ち着いた声を意識して口を開く。
「東堂さんの立場を、私はわかった気でいましたが……甘かったのかもしれません。准さんの言う通り、私なんかが隣に立っていい人ではないのかもしれない」
「だったら……っ」
「なので、頑張ります。努力します」
「……は?」
しっかり准さんと目を合わせ、ハッキリと告げる。
ここで本音を言うのは、得策ではないのかもしれない。
適当に、〝身を引く〟と答えやり過ごし、後から東堂さんに相談する方が安全だともわかっていた。
だとしても、嘘をつくのは嫌だった。
いっときの安全のために、簡単に〝諦める〟なんて言葉を言いたくなかった。
だって、東堂さんが今まで私のためにくれた優しさや想いを、知っているから。



