「あの女とのことは春野から東堂さんに話した方がいいと思ったから、そのへんは言ってない。ただ、最近誰かの視線を感じたり、帰りにつけられてる気がするらしいって話をしたら、時間のある日だけでいいからボディーガードしてやってくれないかって頼まれてさ」
「東堂さんが……?」
「うん。悔しいけど自分はこれから日本を離れなくちゃならないからって。頭まで下げられたら断れないじゃん。だから、俺も酔っぱらったところを家まで送ってもらった恩もあるし、お礼代わりに引き受けたんだよ。単純に春野のことも心配だったし」
言い終わった渡さんが「あー、俺やっぱりコソコソするのとか苦手だ」と自嘲するように笑う。
「でも、それなら一緒に帰ってくれればよかったんじゃ……」
ということは、仕事が忙しいというのも嘘だったのか、と色々納得しながら聞くと、渡さんはポケットからお財布を取り出し、自販機と向き合う。
「最初はそうしようと思ったんだけどさ、仲良く並んで歩いてたら犯人出てこないだろ。どうせ春野がひとりの時を狙ってるんだろうし」
渡さんが、百円玉を数枚自販機に入れボタンを二回押す。
腰を折って350ミリペットのスポーツドリンク二本を取り出した渡さんが、そのうちの一本を差し出すので、お礼を言って受け取った。
渡さんはキャップを開けながら続ける。



